GDP(国内総生産)7~9月期発表
内閣府が16日に、2020年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値を発表しました。GDPという言葉がよく分からないという方は、なんとなく「日本経済全体の指数」というイメージで捉えておいてください。世界で発表されています。3ヶ月ごとに発表され、前回に比べてどうか?など各国でデータが出ます。それが、今の経済の状況、景気の状況を表しています。
さて、そんなGDPですが、前回は、新型コロナウイルス禍で4~6月期に戦後最大の落ち込み(28.8%減)となりました。今回は反動は当然あるといわれていましたが、意外と反動がない・・ という事態になっています。反動というのは、緊急事態宣言も終わり、ある程度経済に明るい兆しが出て当然の中の回復を見込んでいたことを指します。
日本のGDPと欧米を比較すれば回復の鈍化は明らか
数字だけだと、よく見えますしよく聞こえます。それが報道されてしまうと、国民全体がなんとなく安堵の雰囲気になるでしょう。ただ、それをそう感じられる方はいいですが、全くそんなことない!と感じる方も今回は多いはず。
ということで、コロナ禍で大変だった4~6月期の数字と比較、だけでなく欧米も含めて比較してみましょう。GDPが分からなくても問題ありません。数字で、各国の経済状況が一目で分かりますのでご覧ください。
米国:GDP(年率換算)
4~6月期:▲32.9%
7~9月期:+33.1%
EU:GDP(年率換算)
4~6月期:▲39.5%
7~9月期:+61.1%
日本:GDP(年率換算)
4~6月期:▲28.1%
7~9月期:+21.4%
7~9月期の回復の数字は、対前期比ですので大きくなりますが、戻ったわけではありません。しかし、欧米と比べて ” 日本の戻りが弱い ” のが、一目瞭然ではないでしょうか。忘れてはいけないのは、欧米と日本を比べると格段に『新型コロナウイルスの影響を受けていない国』だということです。感染被害はさほどない国、中国などではプラス成長も見られる中で、日本の経済成長の鈍化が顕著に出ているという事実はあまり知られていません。
日経新聞が勘違いを生む内容
個人的に大丈夫か?と大手メディアの中で感じたのが、日経新聞。天下の大手日経新聞は、ひと昔前でいえば、経営者であればだれもが購読し、毎朝目を通すことで、ビジネスに精通するみたいなイメージでした。
生意気ながら、僕自身もその環境を味わっていた時期もありました。多くの経営者が見る、そしてそれを意識する情報、そこに過剰とも捉えられる内容があったらどうでしょうか。気になったのは、7~9月期GDPを表した記事です。
年率21.4%増の日経新聞のグラフw
文面は
>プラス成長は4四半期ぶりだが、コロナ前の水準は遠い。 pic.twitter.com/d6H5tE8mrE— はたなか@投資道 (@hatanaka_angou) November 16, 2020
Twitterでも書いていますが、画像はあたかもV字回復したかのような内容、そして記事の文面を読むと。
・プラス成長は4四半期ぶりだが、コロナ前の水準は遠い
・前期比の伸び率は1968年10~12月期以来、約52年ぶりの大きさに達した
文面をじっくりと読むと、内容はまちまち。良いのか?悪いのか?でいえば、悪いのですが、まぁなんとかなる的な側面も見え隠れしています。ただ画像のインパクトで勘違いをする読者もいるのではないだろうか?と考えます。
意図的に行っているのかは不明ですが、最近テレビでもデータに対しての画像が誇張されていることに違和感を覚えていますので、情報を取集する側はこの辺も信用してはいけない時代に入っているのだと痛感しています。嘘ではありません。ただ、グラフが明らかにおかしい状態ではないかということです。
例を上げるとすれば、このカジノ賛成反対の世論調査グラフがわかりやすいです。反対の大きさに違和感がありますね。
FBやまなかけんじ氏より。
「NHKで流れたというカジノ賛成反対の世論調査グラフ。おかしいとの指摘あるので作表(右図)してみた。」NHK…、放送事業の「公正」さを完全に放棄している。 pic.twitter.com/oldZua2uWC
— 杉山てつみ (@tet_cherubim) July 23, 2018
記事をしっかりと読まない人が悪い、で終わってしまいがちですが、忙しい人の中にはさらっとイメージで捉える人もいます。興味がそれほどない分野ならなおさらですね。だからこそ、視覚的に訴える部分はしっかりとして欲しいところです。
年末まで持たない!中小企業の悲鳴
当然、数字でどうこうトリックをしても現場は嘘をつけません。雇用環境に影響が出ています。大手企業ですらボーナスカットや解雇、早期退職を募るなどあらゆる動きが各業界で出ています。当然、倒産や廃業も相次いでいます。
そんな中、政府の予算委員会はなかなか前に進んでいるように見えません。一部の議員からは、”粗利補償”という声も出ていますが、この状況下でそれくらいのことをしない限り、全ての企業、業界を生き返らせるのは不可能な境地まで来ていると自覚するべき時期です。日経平均は、11月17日26,000円台を29年ぶりにつけました。これで喜び恩恵を受けている人は、日本中にどれほどいるでしょうか。ますます格差は広がる状態となっています。
東京商工リサーチによると、コロナ関連の倒産は10月に月別で最多となる105件を記録。何度も書きますが、これは氷山の一角。
GoToキャンペーンでわずかな回復の兆しは出たでしょうが、それよりももっと分かりやすく、国民の手元に届く支援策を打たないと、笑い事ではない未来が日本を襲う可能性を、個人的に強く感じています。
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