アパレルが売れなくなっている
新型コロナの外出自粛規制や、テレワークの浸透でそもそも外出の回数が減っていたり、長い梅雨、酷暑、更には失業率の増加、非正規雇用の雇い止め、パート、アルバイトの失職など、衣料品業界にとっての逆風が2020年は続いています。
百貨店の売上は継続的に大幅に落ち込んでいますし、大手アパレルメーカーのブランド廃止なども続き、本当に厳しい状況が業界全体に続いています。売れ残った衣料品を処分する方法の一つがオフプライス店での販売となりますが、こちらの最新の状況をまとめてみました。
ブランドを価格帯別で分けてみると?
カジュアルパンツを例に取って、だいたいの価格区分をしてみました。セール価格はこの7掛けから半値になると考えてください。
A)ラグジュアリーブランド級・・・・6万円〜
B)ベターブランド級・・・・・・・・2万円5000円〜4万5000円
C)ナショナルブランド級・・・・・・1万2000円〜2万2000円
D)駅ビルブランド級・・・・・・・・5800円〜9800円
E)SCブランド級・・・・・・・・・2900円〜4900円 ※SC(Shopping Center)
F)HCブランド級・・・・・・・・・1480円〜1980円 ※HC(Home Center)
20〜30年前のボリュームゾーンは駅ビルブランド級とSCブランド級の間にありましたが、今日ではSCブランド級(「ユニクロ」価格)からHCブランド級(「ワークマン」「しまむら」価格)に移りつつあり、激安のG)プライスライン・オフプライスストア級(680円〜980円「タカハシ」価格)も郊外やローカルで広がりつつあります。
価格と品質は必ずしも相関するわけではなく、価格が倍になったから品質が倍になることはなく、せいぜい素材や副資材がワンランク上がるぐらいです。高価格品ほど宣伝費や販売費などマーケティングコストが高く、売れ残りリスクも高くなるから、利幅を載せないと儲からない仕組みです。
ライセンスブランド品には結構なライセンス料が乗っていますから、同価格の自社ブランド品に比べて確実に品質は劣ることになり、低価格帯ほど「割安」になるのは間違いないでしょう。オフプライス店はA,B,C,D,E,Fに続く、Gクラスとして認知され、今後広がっていくことになるでしょう。
オフプライス店
オフプライスストアはアパレル企業の余剰在庫を買い取り、格安で消費者に提供する業態で、米国ではビジネスとして定着してきましたが、日本ではまだなじみが薄く、2019年にワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンの共同出資会社やゲオホールディングスが参入しています。
衣料品の廃棄・焼却を回避でき、環境配慮にもつながるとしています。今後は既存リユース業態、中古衣料品店などが同様の取り扱いを拡大し、浸透していくことも予想されます。
アウトレットはアパレル企業が自社の売れ残り製品を販売しているのに対し、オフプライスストアは特定のブランドに限らず、複数のメーカーから仕入れることができるため、品揃えに幅をもたせることが可能になります。販売力=仕入力につながりますので、すでに店舗網を全国に持っているリユース店が強みを発揮する可能性もあります。
安くても売ったほうがまし
一般的に売れ残った衣服を企業間で売買する場合、定価の3割以下が相場とされます。それでも新型コロナ下で衣服は売れず、在庫はたまる一方となっており、管理費や在庫評価損の可能性を考えれば安くても売った方がましと多くのアパレルメーカーは考え、専門買取業者の直販店舗、オフプライス店が全国で増加しています。
いまや国内で供給される年約28億点の衣服のうち、半数がセールやアウトレットで扱った後も売れ残っている状況であり、作り過ぎであることも明白です。
ドン・キホーテも参入
ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスもオフプライスストアの運営に新規参入しました。衣料品の余剰在庫をアパレルメーカーから買い付け、低価格で販売しています。すでに愛知県大口町で1号店を開業し、2020年中に全国で複数の出店を計画しており、成長戦略として定着させたい考えのようです。
オフプラMEGAドン・キホーテUNY大口店の売り場面積は960平方メートルで、商品数は3万3千点を取り揃えています。コーチやアルマーニ、カルバン・クラインなど約150種類のブランドをとりそろえており、平均で40~60%の値下げ率を実現したといいます。
ワールドはすでに多店舗展開化
ワールドのオフプライス1号店の大宮店はオープンから約1年が経ち、計画通りで進捗しているようです。年間売上高は計画比10%増の3億3000万円を見込んでいます。3月には神奈川県の相模原市に2号店を開店し、年商2億円を目指しています。
2021年3月期は3店舗の出店を計画し、関西圏や地方なども視野に、3年後に30店舗体制を築いていく模様です。自社の在庫だけでなく、他社の在庫も幅広く取り扱い、集客に成功しているようです。
インターネットを経由した販売では、実際のものに触れることができなかったり、実際に届いた服が思っていたイメージと違っていたということもよくある話ですが、様々なブランドを格安で、ワクワク感を楽しみながら買い物をするというのは、アウトレットにもない新しい買い物の方法とも言えますし、大きく成長する可能性が高いように思います。
アパレルの価格低下は続く
新型コロナで在宅ワークが浸透する中で、多くの人がファッションにお金をかけなくなり、更にはオフプライス店の浸透により、衣料品の価格は今後継続的に下がっていく可能性は高いでしょう。販売単価がさがれば、当然のことですが、粗利益単価は小さくなりますので、店舗の運営、ブランドの存続は難しくなります。
ネットショップとの競合も更に加速化することになり、完全なレッドオーシャンの領域で、衣料業界自体が儲からないビジネスだということを改めて認識する必要があります。ユニクロのように付加価値を特化させて価値を高める企業は一部あったとしても、上場企業であったとしても多くは淘汰されることになるでしょう。
そしてオフプライス店を新規展開する上場企業は一時的には注目されて株価も上昇する可能性もあります。このあたりの個別企業の選別をしつつ、投資対象として注目していくことが良いでしょうね。
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