1970年代:ニクソンショックから過剰流動性相場へ
第二次大戦後、ドルと金の交換をアメリカ政府が保証することによって、ドルは世界の基軸通貨となり、成長を続けてきた。
ところがそのアメリカ経済は、冷戦による軍事費の増大、とりわけベトナム戦争の戦費が大きな負担となり、
さらに戦争から立ち直った西ヨーロッパ諸国でEUにつながる統合が進み世界での存在感を増し、同じく戦後復興を遂げ高度経済成長が止まらない日本に追い上げられ、1960年代にはアメリカの優位は失われてしまった。
アメリカは、自国経済を守ために各国からドルを金に換金する約束を突然放棄する形となった。
それが1971年8月16日、ニクソン米大統領によるドルの金交換停止などを柱とするドル防衛強化策発表である。
金と交換できる前提で各国が保有していたドルである。
金と交換できなくなったことで、その価値が急落することとなった。
実質、ドルの切り下げが行われた形になった。
このことは後に「ニクソン・ショック」と呼ばれる。
日本への影響
このニクソンショックはドルの金交換停止だけではない。輸入品目に10%の関税をかけて、国内産業を守ろうとした。
一方その頃、日本の産業は主に輸出である。そのため、ニクソンの発表を受けて日本の株式相場もひどく動揺し、日経平均は215円急落。下落率は7.68%。下落幅ではスターリン暴落を上回り、この時点で過去最大を記録したほど市場へのインパクトは強かった。
また、ドルが実質的に切り下げたことにより、「円切り上げ」の時代に入っていく。
輸出が主だった産業の日本としては、円高は本来は不利であるが、当時の日本の経済の競争力は強く、順調に貿易黒字を伸ばしていき、
71年の貿易黒字は77億8700万ドルと前年のほぼ2倍に急増、72年はさらに89億7100万ドルにふえました。外貨準備高も71年末152億ドル、72年末183億ドルと積み上がた。
日本で過剰流動性相場が発生
この頃、日本企業の収益は一時的に低下し、設備投資意欲は鈍っていた頃。
貿易黒字、外貨準備の増加に伴って膨らんだ円資金は設備投資には向かわず、遊休資金は土地や株式購入に流れたのである。
企業の自己資金だけでなく、銀行からの借入金も投機に向かったほどであった。
いわゆる、「財テク」である。
その結果、71年12月末に2700円台だった日経平均は72年12月末には5200円台に上昇。
さらに73年1月24日には5359円という、過剰流動性相場を構築していった。
ほぼ1年の間に2倍近い上昇と考えると、その異常性が理解できるであろう。
この頃の投機熱は土地や株式だけでなく、ゴルフ会員権、貴金属から宝くじにも及んだほどだ。
他にお金の行き場がない結果の、投資・投機。
稼働流動性相場の大きな特徴である。
しかし、73年2月の再度の円切り上げと固定レート制の崩壊を機に過剰流動性相場に終わりを告げる。
過剰流動性相場の終わり
過剰流動性相場は性質上、インフレも併発する側面がある。
しかし、そのいきすぎた物価上昇が顕著になり、73年秋の石油ショックへとつながり、日本の経済は低迷することとなった。
株価は下落。
下値を探る調整が続き、日経平均は74年秋の3355円まで下げていったのだ。
その後、株式相場は回復を見せたが、73年1月高値を上回ったのは78年になってから。
実に5年の月日を費やしたのである。
今、新型コロナの影響で各国が未曾有の金融緩和を行ったことで、世界中が過剰流動性相場にあると言えるが、この歴史から学べることは多い。
過剰流動性相場下では投資先はその実態とは乖離した価格が形成されること、価格のピークは過剰流動性相場の中で付けられること、その終盤に、あるきっかけを境に調整局面に入ること、そこから元の価格に戻るには時間がかかること。
ある種、見せかけの好景気が演出される相場であるため、この相場の中で投資を行うには注意が必要だ。ポイントは、その株価や資産の価格が、本当の価値と同等の価格なのか、そうではないのか。
つまり「実態」の伴う価格か否かが重要ということである。
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