悪化する米中関係は奈落の底に
壊滅的な被害を及ぼす新型コロナのパンデミックは、世界の2つの経済大国が立場の違いを棚上げにして協調する好機にも思える。ところが、米国と中国の関係は1989年の「天安門事件」で中国政府が軍を投入し民主化運動を弾圧した時と同様に、最悪の状態になっている。両国は危機のさなかに激しい中傷合戦を繰り広げるだけでなく、実際の様々な措置案が取られている。AI TRUSTでも記事にしたこちらをまず読んで流れを理解してほしい。
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香港ドルが怪しい動き
中国の国家安全法の制定方針採択をきっかけに香港株から資金が流出している。それに対し埋め合わせようと、時価総額の大きい本土銀行株を中心に大量の本土資金が流入している。中国本土からの株式投資が急増し、5月最終週の買越額は約2千億円に及んだ。為替市場でも緊張が高まり、香港ドルが許容変動幅の下限に落ち込むと見込む先物やオプションが積み上がっている。
人民元相場が過去最低に
5月末の時点でオフショア人民元相場が過去最低水準に迫っている。米国が新たな制裁措置を打ち出す場合、中国政府は元安を積極的に容認するとの観測が背景にある。27日のオフショア人民元は前日比0.7%安の1ドル=7.1965元と、昨年9月3日以来に記録した過去最安値に近づいた。新型コロナの対応や香港問題を巡り、トランプ米政権が中国共産党に対する批判を強める中で、過去数週間にオフショア人民元は下げ足を速めている。
国家隊の資金が香港に流入
多くの市場関係者は『国家隊』と呼ぶ中国政府系資金が入り込んだとの声が広がっている。香港国家安全法の制定をきっかけにした資本逃避が続く中で、市場の動揺を抑え込もうと、中国当局は躍起になっている。
アメリカの狙いは中国の金融システム
アメリカは中国の弱みである金融に狙いをつけ先手を打っている。既にナスダック市場の新規上場ルールの厳格化で中国企業の締め出しに動いた。中国企業の米市場での調達額は2018年に約1兆円に達したが、20年は5カ月間でわずか1千億円台にまで落ち込んでいる。米株式市場に上場しているネット通販の京東集団やゲーム大手の網易は米での上場廃止リスク回避のため、香港市場への重複上場を目指している。
米中のマネーの結びつきはグローバル化とともに太くなったが、その様相はまさに一変している。香港の統制強化をきっかけに香港市場への投資リスクが上海など中国本土並みに高まるとの懸念がくすぶり、米機関投資家の中には、大きな収益機会を逃しかねないとの不安も高まっている。
基軸通貨であるドルを擁する米国では、上院が中国の銀行にも制裁を科せる法案の検討に着手した。これは米銀との取引を凍結させ、中国勢を世界のドル決済網から締め出す劇薬となり、実際に行うかどうかは別としても世界経済、金融市場にとっては大きなリスクとなる。
対する中国は?
中国は米国で上場する中国企業にある「変動持ち分事業体(VIE)」と呼ぶ独特な仕組みを利用し、リスクの回避も行っている。投資家は企業の株式を直接保有するのではなく、契約を通じて同等の権利を得る形だ。海外からの投資を制限する中国の規制を回避する狙いだ。
VIEを使った投資規模は非常に大きく、少なくとも数十兆円規模とみられている。アメリカの当局がこの仕組みを問題視すれば、成長資金を投じた海外投資家が損失を被るリスクも高く、米国に上場する中国株への投資は敬遠される可能性も高くなる。米中をはじめ世界経済はグローバル化で相互依存を深めてきた中で、制裁カードを切った際の悪影響は、結局の所、自国にも跳ね返ることになる。
日本のバブル崩壊を思い起こさせる動き
日本のバブルの最中には、日本企業が多くのアメリカの象徴とも言える企業群を買収し、ロックフェラービルなどの不動産の買収も行った。多くのアメリカ人、資本家層の怒りを買い、これが原因で日本のバブルは徹底的に潰されたという専門家も多い。
中国に対してアメリカが金融市場からの徹底的な締め出しを行えば、中国の不動産バブル、債権バブルが崩壊する可能性もある。そしてもしそのような事になれば、共産党一極集中体制自体が崩れるリスクにもつながり、それをさせないためには、国民の不満を外に向けさせるために、中国は更に過激な行動に移るリスクも高く、日本の地政学的リスクも高まる点にも注意が必要となる。
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米:ウイグル人権法案可決
香港の情勢などをめぐってアメリカと中国の対立が続く中、アメリカ議会下院は、中国でウイグル族の人権侵害に関わった中国の当局者に制裁を科す「ウイグル人権法案」を可決した。トランプ大統領が署名すれば法案は成立するが、両国の関係悪化は加速し続けている。
日々悪化する米中関係に注意を!
金融市場の次の大きな混乱が起こるきっけかは間違いなく米中問題にある。トランプ大統領の発言には常に注意を図ってほしい。ボラティリティの高い相場になることは確実なので、リスクヘッジをする仕組みをしっかりと構築しつつ、市場参加をしてほしい。
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