アウトドアを楽しむため、個人で山を買うことへの関心が高まっています。近年のキャンプブームに加え、新型コロナの感染拡大に伴う環境の変化が背景にあるのでしょう。プライベートキャンプ場をつくるのが目的の森林購入が増えているのです。
芸能人のヒロシが、自分で山を買ってプライベートキャンプ場づくりをしていることをユーチューブで配信したこと。そしてそれをいくつものテレビ番組で放送されたことがきっかけとなったようです。
思いがけず森林が安いことを多くの人が知り、実際の購入へと結びついています。何千坪の土地がせいぜい数十万円で売買されているのです。多くの人が1回のボーナス程度で手が出ることに気がついたわけです。今日はキャンプという趣味と、個人が行う投資の可能性について合わせて深掘りしていきたいと思います。
頻繁に行われる森林売買
実は山林の売買は、結構頻繁に行われています。戦後は、木材価格が高騰したため森林の購入が多くなりました。森林の購入者は、当然山にある木を伐って売り、あるいは木を植えて林業を行うことを目的に購入していました。しかし林業が斜陽産業になり、木材価格も安くなると、森林売買も沈静化することになります。
その後の森林売買の目的は変わり、工業団地やゴルフ場を建設するといった目的が多くなりました。そして最近では、山林が伐採され、メガソーラーを建設するケースも増えています。バイオマス発電の燃料として生えている木をすべて伐採して、その後は放置されることも起こり、こちらは現在社会問題化しています。
草刈りや伐採、かなりの手間を覚悟すべき
森林を所有して利用しようとした場合、実際のところはかなりの手間がかかります。建築物を建てる場合は様々な規制、法令に合わせ、建築の許認可も調べる必要があります。購入してすぐにキャンプができるわけではなく、キャンプが行えるように整地をし、草刈りをする必要があります。
日本の山は、放置をしておくとたいてい草ぼうぼうになり、低木がびっしり生えてしまいます。それではキャンプを行うこともできなくなります。定期的に草刈りをする必要がありますが、1か月もすればすぐに草ぼうぼうになりますから、月に1度のキャンプだとすれば、毎回行くたびに草刈りに時間を費やさないとなりません。
木の伐採も慎重にやらなければ、チェーンソーによる事故は多く、死傷事故につながる恐れもあります。
野生動物や虫の出現
現在日本中の山でイノシシや鹿が増えていますから、その対策も必要になります。食べ物を外に置いておいたり、食べ残しを捨てたりすると、その臭いで動物は寄ってきます。浅く埋める程度では掘り返してしまいます。
少々の網や柵はあっと言う間に壊されます。たき火をして、煙が上がると、近隣の人が山火事と間違えて通報されることもあります。水の確保も注意が必要で、沢があるからと勝手に引いたら地元の水利権に抵触する場合もあります。
都会に住んでいれば大量の虫を見ることも稀ですが、山林に入れば様々な虫が大量発生しますし、大量の藪蚊に襲われることもあれば、雀蜂、湿地であればヒルが群生していることもあります。整備されたキャンプ地と違い、普段一切 人が入らない山林ですから、元々は虫や動物等の住処なのです。虫にうんざりして嫌になったというのはよく聞く話です。
大雨で崩壊すると賠償問題?
さらに注意しなければならない点は近年頻発する台風・大雨で山林が崩壊することです。もし自分の森林が崩れて他人の土地(宅地や田畑)を傷つければ賠償問題になります。あるいは倒木が道を塞ぐような事故も起きます。緩やかな斜面でも、雨が一カ所に流れ続けたら、地面が抉れて気がついたら深い谷になってしまいます。
本当にキャンプ場として長期間利用するのか?この点を慎重に考えなければなりません。飽きてくることもあれば、事情で通えないことも起きるでしょう。年をとれば体力的にきつくもなりますし、家族構成そのものも変わります。利用しなくなれば、山は荒れていきます。ブッシュになって近寄りがたくなります。結果として放棄林となってしまうわけです。
フリップの可能性
では、山林を買うことはやめた方が良いかといえば、もっと柔軟に考えることで、個人投資へのチャンスとも考えられるのです。それはどのような方法なのか? アメリカで長年個人が行っているフリップという手法が参考になります。
アメリカで不動産投資家誰もが憧れる投資方法として最も人気が高いのは、中古物件を購入し、できるだけ短期でリモデルを完成させ、転売し利益を得るという通称 ” フリップ ”
と言われる手法です。一戸建てやコンドミニアムのフリップは専門業社ではなく、殆どが個人により行われています。
なぜフリップは人気が高いのか?
それはもちろん短期で高額な利益が見込めるからなのですが、その分リスクも高いしかなりの知識を必要とすることは確かです。
1.物件分析能力(改装後にどのくらいの価格で転売できるかを見極める)
2.交渉力(物件をどれだけ安く買えるか)
3.工事の知識(やらなければいけない部分とやらなくていい部分を見極める)
4.資金調達力(現金購入必須なので短期間に必要な現金を揃えられる)
5.インテリアデザインセンス(買い手にどれくらい好印象を与えられるか)
6.内装業者を管理する能力(業者に騙されずできるだけ安価に早く完了できるか)
アメリカの場合、フリップを副業、専業として行う人も多く、そこに専門に融資をするプライベートレンダー(貸し手)も数多くいます。 投資家は資金を個人に借りていてプロジェクトが動いている間は金利を支払っていますから、早くプロジェクトが完了すればするほどこちらの利益は高くなります。
お金を貸してくれている投資家は、投資期間が短くても、その後に他の物件に再投資し継続収益を得るメリットがあります。プライベートレンダーと呼ばれている個人の資産家が、技術を持ったフリップを実際に行う人と組んで、それぞれのプロジェクトを進めていますから、このフリップマーケットは非常に大きく育っているのです。
山林をフリップする
山林を購入してもすぐにそこでキャンプができるわけではなく、一定の整地が必要です。しかしここにはノウハウ、手間、時間もかかりますので、この部分を個人投資家が事業化してしまうのです。
最初手掛ける山林では、全てをいちから行いますので、わからないこと、時間のかかることも多いでしょうが、いくつか手がければスムーズにできるようになるでしょう。自らが直接作業をしなくても、コロナ禍の時代ですから、代わりに作業をしてくれる人はいくらでも見つかります。シルバー人材センターを活用すれば、山林作業は慣れているという方も見つけやすいと思います。
ひとつの山を買った上で、いくつかに分けて、それぞれを整地化して売却する。その中の一つの土地は自らがキャンプ地として一定期間楽しんだ上で、また別の町の山に住みたいと思えば転売する。キャンプのノウハウも積み上がれば、その工夫も売却する山林には活かされていますから、買い手からも喜ばれる物件になるのではないかと思います。 時間、手間をお金で買いたいという需要は、それこそ ” 山ほどある ” と思います。
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