経済ビジネス

銀行の存在を脅かす決済アプリ

決済アプリにたまる疑似預金が膨張している

中国では既にアリペイやウィーチャットペイなど、スマホ決済アプリに資金を入れたままにして、それを利用する生活が当たり前になっています。

昨年11月に香港株式市場に上場しようとしていたアリペイの運営会社のアントの上場が直前で取りやめになったのも、ジャックマー氏の既存銀行への批判が原因でした。日本でも決済アプリに貯まる擬似預金が膨らんできています。

これにより既存の銀行は預金という事業分野においてダメージを受けることになり、特に地方銀行や信用金庫などの先行きはかなり厳しいものとなります。今回はこの辺りに焦点をあてて分析してみたいと思います。

日本の決済アプリ状況は?

日本でもスマートフォン決済アプリが広がりをみせています。アプリ内にたまる疑似預金が増えており、銀行の預金業務を侵食しつつあります。今後、アプリへの給与払いが解禁されれば流れはさらに強まることになるでしょう。

銀行は、預金を巡り厳しい規制を受けており、決済アプリに対しても同等の安心・安全の確保を主張していますが、これはその通りだと思います。アプリを運営する資金移動業者はIT系企業であり、既存金融業者とは元々は全く違うジャンルとなりますが、預金を預かる以上同じルールは必要でしょう。

銀行や信用金庫などは預金取扱金融機関と呼ばれ、最低資本金や自己資本比率、手がけられる業務範囲などを厳しく制限されています。監督する金融庁とすれば、最大の狙いは預金者を守るためであり、破綻しにくくすると同時に、万が一破綻しても預金が確実に返還されるようにするのがねらいとしてあります。

預金は送金、貸し出しと並ぶ銀行の三大業務の一つ。すでに送金や貸し出しはフィンテック勢が侵食しており、預金業務にもフィンテック勢が勢いを増し入り込んでいます。

アプリへのチャージ残高に年利1%のポイントを付ける

スマホ決済アプリのKyashでは、チャージ残高に利息をつけるサービスを展開する予定でした。

「残高利息」は、銀行口座から入金した残高に年利1%のポイントを「Kyashバリュー」として付与するしくみです。 付与されたポイントは払い出せず、決済にのみ利用できるようにしました。銀行免許を持たない同社が資金移動業者として「利息」を支払うサービスは注目を集めましたが、サービス開始前日の昨年12月7日、同社は一転してサービス開始を見送ると発表しています。

Kyashは一転、サービスの見送りを決めた

出資法は金融機関を除き、業として預かり金をしてはならないと定めています。利息をつけて資金を集めれば、実質的に預かり金に当たるとみなされる可能性があり、Kyashはこれらに該当する可能性がありました。

懸念を払拭できなかったKyashは利息サービスを見送りましたが、銀行口座を介さずに、給与を直接スマホアプリに振り込むデジタル給与払いが解禁されれば、同時期に法律自体が見直され、決済アプリで実質的な預金ができるようになることが予想できます。

便利であること

銀行業というのはもともと殿様商売的なところもあり、イノベーション、改革という面では決して早い産業ではありませんでした。フィンテック起業群との競争になれば、多くの地銀、信金はその争いに敗れていくと思われます。

銀行の統合、淘汰が急加速することになりそうですが、そもそもネットが普及し、アプリの利便性が高い今の時代に、駅前に大きな店舗を構え、多くの従業員をおく形が既に時代遅れともいえ、銀行の店舗数自体も減少することになるでしょう。コンビニのキャッシュディスペンサーの機能も拡張するでしょうし、それで十分な気がします。

銀行員自体の淘汰も進むことになるでしょうが、プライドばかりが高く、他の産業で通用するかといえば否。銀行からの中高年の再雇用は進まず、自殺者の増加なども考えられますし、所得の高い銀行業の従業員数の減少は、日本人の平均所得を下げることにも繋がっていくでしょう。

投資先としての見極めは?

上場する銀行への株式投資は慎重に行う必要がありますし、それよりもフィンテック起業群の中で将来性の高い事業者を探し、そこに投資をするほうが格段と効率も良いでしょう。

米中のプラットフォーマーを見ても明確ですが、最終的には顧客群はいくつかの絞られた企業が勝ち残ると思います。そこが何処になるのか? 各社の利便性を見極め、最も便利なところ、企業の株を長期的な視点で買っておくというのが正解なのかもしれませんね。

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