原油価格は為替相場に影響を及ぼす
2020年1月、米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害した報道が世界を駆け巡り、中東情勢が一瞬にして緊迫につつまれた。
双方が報復を宣言し、大規模な武力衝突の懸念が出る中で、原油価格は一時的に上昇したがすぐに反転した。
参考記事:イランとアメリカで戦争が起こったら原油価格はどうなるのか?
このような突発的な地政的リスクの上昇を原因とする原油価格の変動は特殊なケースであるが、一般的に原油価格は世界の需要と供給のバランスで価格が変動する性質があり、原油の輸入国・輸出国にとって原油の価格変動はその国の為替相場に大きく影響する。
そこでまずチェックしたいのは、カナダドルとCRB指数の相関関係だ。
CRB指数とは?
CRB指数とは「トムソン・ロイター・コアコモディティCRB指数」といい、アメリカとイギリスの商品取引所で売買される先物価格から算出した「国際商品指数」であり、より分かりやすく言えば、原油や金などの先物価格を指数化し、全般的な資源価格の流れを把握する為に使われる。
原油の動向を元に為替の未来を予想する上で、このCRB指数は外すことは出来ない。
そして、この指数の動きと資源埋蔵国の通貨の動きに相関関係が見られる。
CRB指数とカナダドルの動きが連動してくる理由
ガソリン価格=原油価格が上昇し、その動きにCRB指数が連動すれば、数ある資源国の中でもカナダドルが上昇する可能性が高い。
その理由は、カナダは世界有数の原油埋蔵量・天然ガス産出量を誇る資源国の1つであることだ。
非常にシンプルな考え方であるが、原油などの資源価格が上がる、ということは、それが高く売れるということだ。
そして、それら資源を莫大な規模で埋蔵する国の価値が上がるということでもある。
それにより、通貨が買われるという動きに繋がる。
南アフリカやオーストラリアも資源国ではあるが、南アフリカの場合は国内景気が安定せず、CRB指数が上がったとしても南ランド買いをするまでの動機にはつながらない。
オーストラリアは中国の影響が強く、中国の動向次第で為替が上下するため、CRB指数と為替相場が連動する動きが少ない。
一方カナダは対米貿易が比較的安定して行われている兼ね合いでドルに対して価格が安定傾向にあり、景気も好調でリスクが少ない国であるため、CRB指数に為替が反応しやすい資源国なのである。
ガソリン価格や原油価格に関するニュースをみたら、CRB指数を調べてみると良い。
CRB指数が長期的に上昇・下落トレンドに入っていれば、カナダドルのトレンドの見極めができるだろう。
他にも資源産出国は様々あるので、原油価格とその国々の為替を比較し、自分なりの相場の相関関係を見つけてみてはどうだろうか。
参考までに、2017年度の原油産出量を掲載しておく。
順位 国名 生産量(バレル/日量)
1 アメリカ合衆国(米国) 1,305.7万
2 サウジアラビア 1,195.1万
3 ロシア 1,125.7万
4 イラン 498.2万
5 カナダ 483.1万
6 イラク 452.0万
7 アラブ首長国連邦(UAE) 393.5万
8 中華人民共和国(中国) 384.6万
9 クウェート 302.5万
10 ブラジル 273.4万
出典:BP Statistical Review of World Energy 2018 – Oil: Production, 2017(「BP世界エネルギー統計2018」(原油生産(2017年)
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