住宅・不動産バブル再来の足音
現在、住宅・不動産価格が世界で上昇基調にあります。コロナ禍であらゆる状況に変化が出ているということが背景にあります。記録的低水準の住宅ローン金利と新型コロナウイルスのパンデミックで、リモートワーク用に広めの住宅を希望する動きに後押しされています。
金融機関は住宅ローンには力を入れやすく、働き方に変化が見られる可能性のある業種で、働く人にとってはアフターコロナを見据えて、郊外などより価格が安い地域へと広げる動きも出ています。何よりも今回は、世界的な金融緩和も後押しになっています。
世界の住宅事情
世界で住宅や不動産の価格が上昇しています。英不動産コンサルティング企業ナイト・フランクによると、分析対象となった56の国・地域のうち昨年住宅価格が上昇したのは89%で、増加率は平均5.6%、世界の住宅価格は現在、ここ3年ほどで最高の伸びを示しています。
米国
国内の物件のほぼ半数が市場に出てから1週間以内に売れるという記録的なペースです。
ニュージーランド(NZ)
NZ準備銀行(中央銀行)が、一部の住宅ローンに関する規制案を検討している状態です。住宅価格が1年で23%上昇しています。
トルコ
2019年第4四半期から2020年第4四半期の間に住宅価格が約30%上昇
一方欧州ではこのような傾向ではなく、イタリアは1%成長しスペインは2%低下するなど、南欧では比較的停滞した状態が続いています。
木材価格からわかる住宅需要
興味深いのが、材木先物のチャートです。高騰ぶりを、コロナショックといわれた2020年3月末以降に見せています。約4倍以上の価格となっており、木材の需給バランスが崩れつつあります。
「そもそも木材を調達できない」という状況が表面化しつつあります。この木材価格の高騰の背景には建築需要で、木材が求められている一方、カナダでは松くい虫の被害による構造的な供給キャパの減少や中国の木材需要の急増もあります。
材木先物価格が急騰。
これ月足レベル。住宅がバブリー。 pic.twitter.com/FLv7EdY4AZ
— はたなか@投資道 (@hatanaka_angou) April 14, 2021
日本にも影響が出ており、足元ではコンテナ不足によってヨーロッパからの集成材が日本に入ってこないという状況が表面化していて、国内でも値上げが起こっています。
日本経済新聞引用(2021.3.12)
米松製材品最大手の中国木材(広島県呉市)は住宅の梁(はり)や柱に使う米松製材品などを3月1日受注分から1立方メートル3千~6千円値上げした。値上げは昨年12月中旬以来約2カ月半ぶり。
必要だから価格が上昇する、価格が上昇してでももっと欲しいという人がいると、さらに希少価値が出ます。このように材料の価格が上昇すると、住宅価格も当然上昇していきます。
金融危機前の住宅バブル以来の活況ぶり
気になる点が、現在の住宅バブルの活況ぶりは米国では2006年以来で、2006年といえば、バブルが崩壊し世界がリセッション(景気後退)に陥る直前でした。当時は、サブプライムローンが不動産ブームを背景に急速に普及したころです。
サブプライムローンとは、信用力の低い借り手向けのローンです。借入れ当初の数年間は金利が低めに設定されており、住宅価格上昇ありきで借りている人が多い中で、それが証券化され米国の内外を問わず、多数の金融機関に購入されていました。
その後2007年に米国の住宅価格は下落、投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスの破綻で世界を巻き込むリーマンショックとなりました。当時との違いは、世界の金融緩和や貯金のある人の住宅購入の動きなどです。
投機的な動きも見られる
安く買って高く売るのが目的である投機でいえば、苦境のコロナ禍で旅館やホテルに対しての動きが見られます。2021年2月に、中国人による買収案件の相談が240件と前年同月の2.4倍となっており、中国人の豊富な資金は宿泊施設には魅力的ですが、地域経済への波及効果や雇用維持に懸念があります。
苦しさの中で資金力がものをいう構図が出来ていることには違いがなく、この件は旅館やホテルですが、このような投機的な動きも住宅・不動産バブルを加速させます。
大きく膨らむと必ず収縮する
今がバブルかバブルではないかという議論よりも、過去の動きでいえば膨らめば必ず縮小する時期がくるということです。これは現在の株式市場や仮想通貨市場にもいえることです。
” 山が高ければ高いほど谷も深い “
住宅市場に関してもこの考え方は当てはまりますので、この辺りを今後ウォッチしていく必要があります。
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