中国経済、そして中国不動産企業、更には地方財政破綻リスクが高まっており、大きな世界経済の懸念材料となっています。
そこで本記事では、中国不動産バブル崩壊と世界経済への影響について解説していきます。
碧桂園 ドル建て債務不履行
中国の不動産最大手である碧桂園が8日に払うべきドル建て債務が不履行となりました。
そして、その後10日に、碧桂園は2023年1-6月期の最終損益が最大550億元(1兆円強)の赤字になるとの業績予想を発表しました。
Country Garden(碧桂園)は中国広東省に拠点を置く不動産開発会社です。 2020 年には、フォーチュン グローバル 500 リストで 147 位にランクされました。
2021年に破綻がほぼ確定していた恒大集団さえ債務超過になりながらも延命措置がとられていますので、碧桂園も中国政府が延命を望む限り会社としては存続はするのでしょう。
しかし、中国の不動産バブルは完全崩壊に向かっていることは確実だと考えられます。
融資平台の負債総額は66兆元
地方融資平台は、中国の地方政府傘下にある、資金調達とデベロッパーの機能を兼ね備えた投資会社です。
中国政府は地方政府の融資平台の債務の一部を公債に移し替えると最近発表しています。
融資平台とは地方政府のシャドーバンキングを担当する投資会社であり、地方政府が資金調達をして不動産開発を行ない、地方政府の官僚が自分の地域のGDPを数字上嵩上げして中国共産党から評価されるための仕組みとして機能してきました。
中国の地方政府は常に共産党中央部だけのご機嫌を伺い、見せかけのGDPを上げるために、公共事業をおこない、無駄な箱ものを大量に作り続けてきました。そしてその結果として出来上がったのが使用されない大量の不動産と膨大な非公式の債務です。
地方政府の債務とは公式には異なる融資平台の債務はIMFの推計で66兆元と言われており、中国のGDPが122兆元ですから、GDPの半分以上の規模にまで膨らんでいるのです。
外資の中国投資87%減少
外国企業が4~6月期に中国での工場建設などに投じた対中直接投資が、49億ドル(約7,100億円)まで減少しました。
これは統計が確認できる1998年以降で最少で、前年同期比87.1%の減少率は過去最大となりました。
中国では7月から反スパイ法が強化されており、スパイ行為の定義についてあいまいで、法律が恣意(しい)的に運用されるおそれがありますから、とてもではないですが、恐ろしくて企業も新規、追加で中国に投資などできません。
習近平独裁体制の中で、悪い方悪い方にどんどん暴走しているように見えます。
この後も続く悪循環
中国の国家統計局が9日発表した7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比0.3%低下と、2021年2月以来のマイナスとなりました。
そして、7月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比4.4%低下しました。
PPIの低下は10カ月連続で、消費者物価と生産者物価の両方が下落するのは20年11月以来となります。
不動産が売れなければ、家電や家具などの消費は大きく落ち込みます。そして不動産販売が低調で資金繰りが苦しくなれば、デベロッパーは手持ち在庫不動産を安値でも現金化に走ることになり、不動産価格を下落させます。
中国では不動産価格に対しては前年・前月等、一定価格以下では売らせないような暗黙のルールもありますが、実際にはその価格では殆ど商いが成立しません。
実際の現在の中国の不動産市場では、実質的な暴落が起こっていると考えられます。
深刻な若年層失業率
6月の公式統計では若者の失業率は過去最高の21.3%でした。これは就職活動を行っている人を対象としていますので、実態はより深刻です。
職探しをしていないため統計に含まれないニートを含めると5割近くに達するとの試算もあります。
ただでさえ作りすぎた不動産(マンション等)が市場に有り余る中で、それを本来買うはずの若い世代の失業率が実質50%では、買いたくても買うお金はないわけですから、新規の買い手は非常に少ないわけで、需要がなく、供給が有り余っている状況では、不動産は暴落するしかありません。
といっても中国は共産主義国家ですからさまざまな手立てをうちつつ、不動産市場は緩やかに崩壊していくと考えられます。
世界・日本の受けるリスク要因
下記の7つです。
①デフレの世界への輸出
②中国からのインバウンドが期待外れに?
③富裕層の海外移住の加速
④米中関係はより深刻に
⑤インド・ベトナムが最も恩恵を受ける?
⑥台中リスクは拡大
⑦世界の金融市場へは深刻な重しに
⑧商品価格の下落
それぞれ説明していきます。
①デフレの世界への輸出
中国国内のデフレにより、物の価格を下げて販売を伸ばす、日本の長期間続いたデフレと同様の状況になることが考えられます。
安い製品が世界に輸出されることで、世界のインフレ率低下には寄与します。
②中国からのインバウンドが期待外れに?
不動産価格の下落により含資産が含み損に変われば、多くの中国人の生活は倹約に向かいます。
日本への中国旅行者はコロナによる移動規制はなくなりましたが、思ったほど伸びないかもしれません。期待先行で高くなっているインバウンド銘柄の高値掴みには注意が必要です。
③富裕層の海外移住の加速
既に資産を築き上げている中国人富裕層の海外移住は加速することになるでしょう。
ウクライナ戦争後、100万人単位のロシア人は海外に移住しましたが、これ以上の規模になることが考えられます。
これらの層が向かう先はシンガポール、日本、タイ、カナダ、アメリカ等になると考えられ、優良不動産は引き続き買われることになるでしょう。
④米中関係はより深刻に
既に米中関係は非常に深刻な状況に陥っていますが、さらに関係は悪化することが予想されます。
先端半導体等の規制はさらに解釈は拡大化されていると思います。
反スパイ法の強化もありますから、中国に進出している米企業はさらに縮小に向かっていくことになるでしょう。
⑤インド・ベトナムが最も恩恵を受ける?
脱中国の流れが加速する中で、最も恩恵を受けるのはインドとベトナムになると考えられます。
今年に入りインド株は上昇が続きますが、この後も5年、10年という単位でインド株は大きな成長が見込めると思います。
個別株の分析は難しいですが、インド株式指数であるSENSEXなどに連動する投資信託などは良い投資対象になる可能性が高いと考えられます。
⑥台中リスクは拡大
ウクライナ戦争でのロシアの失態を見ていますので、中国の台湾攻略は慎重になるとは思っていますが、中国国内の経済悪化がより深刻化した時は、国民の不満の矛先を外に向かわせるため、習近平が台湾への軍事行動を起こすリスクは格段に高まることになるでしょう。
中国が台湾に対して軍事行動を起こしたとしても、アメリカは直接的に参加するようなことはなく、あくまでも武器支援のみになるでしょう。
日本が巻き込まれるリスクは高まっている
ただし、先週、台湾を訪れていた麻生副総裁が非常に過激な発言(戦う覚悟)をしましたが、日本が巻き込まれるリスクは高まっていると考えられます。
もし日本が何らかの形で紛争に巻き込まれた時は株価は急落し、日本円は大きく売られることになり、日本経済は大幅に悪化します。
朝鮮戦争の時にはあくまでも朝鮮半島内だけの戦争でしたので、日本にとっては特需となりましたが、今回はそのようなプラスの状況にはなりません。
⑦世界の金融市場へは深刻な重しに
中国の成長、消費拡大が世界経済を過去数十年に渡って牽引してきたことも事実です。中国の不動産市場の暴落、崩壊により、継続的に消費力は減速しますので、世界の企業の業績にも大きくマイナス影響を及ぼします。
アップルの香港と台湾を含む中華圏での4-6月期売上高は予想を上回る7.9%増の157億ドル(約2兆2400億円)でした。しかし今後中国経済が悪化すれば、売上は当然悪化します。業績が下振れすれば、株価は下落します。
売り上げに占める中国の割合が大きな企業ほど影響は大きくなりますので、これらの企業の株価にとっては非常に重しになります。
⑧商品価格の下落
中国の不動産開発により、世界の鉄鉱石、銅、アルミニウムなどの資源は需要増加によって押し上げられてきました。
この新規需要が大きく減速することで、これらの資源価格は下落、低迷することになります。昨年秋の段階で銅の先物を買い、その後短期間で20%ほど上昇しましたが、今年の2月以降下落に転じています。
中長期的にも銅の需給は逼迫することは確実なのですが、中国の需要低迷により価格は重い動きです。辛抱強く持ち続けますが。
まとめ:中国の不動産バブル崩壊が起これば世界経済に与える影響は深刻
中国の不動産バブル崩壊は世界経済に与える影響は深刻で、さらには台中リスクも高まることにつながります。
そして、これは日本にも直接的な影響が大きいですから、この後も引き続きこのリスクについては検証していきたいと思います。