韓国の人口減少は日本よりも大きい
韓国も日本と同様に人口減少時代に入り込んでいる。昨年10月の出生数は2万5,648人に対して死亡者数は2万5,520人となり、人口増加率はゼロになった。
そして2020年、人口減少が本格化する。経済成長に必須の16~64歳の生産可能人口はすでに2017年に減少傾向に転じた。
韓国の妊娠可能年齢女性の1人当たり出生率は2018年に0.98人で、日本の1.42人よりも圧倒的に低く、韓国の出生率は世界最低レベルであり、今後急速に人口が減少するリスクが高くなっている。
韓国の出生率が低くなっている理由とは?
韓国の出生率低下の大きな理由は若年層の失業率が大きく関係する。現在の韓国では、若年層の失業問題が深刻さを増し、OECDによると、2018年、同国の全失業者に占める25~29歳の割合は21.6%に達した。
7年続けて、韓国における20代後半の失業者の割合はOECD加盟国内で最悪の状況になっている。
一部の世論調査によると、若年層を中心に、ムン・ジェイン大統領に雇用対策などを求める人々は多く、その背景には、苦しさを増す生活環境への改善の思いがある。
しかし、左派の政治家である文大統領にとって、総選挙を控える中で労働組合などの既得権益にメスを入れることは難しい。
そしてそれは結果的に、若年層の雇用状況にしわ寄せがいってしまうことになる。ある意味で、文大統領は若年層の窮状に目をつぶらざるを得ない状況に追い込まれているとも言える。これは現在の日本の状況にも重なって見える部分がある。
韓国ではこうした状況が当面続きそうで、若年層が将来に希望を持てない状況は、国の今後にとっては非常に悪影響を及ぼす。
韓国経済の安定と成長にマイナスの影響を与えることになる。それに加えて、米中の貿易摩擦など、韓国経済を取り巻く不確定要素も増えているなかで、短期間で韓国の雇用環境が改善に向かうとは考えづらく、事態はかなり深刻な状況にある。
ムン・ジェイン政権の目論見とは逆に!
韓国では労働組合の影響力が非常に強く、雇用環境が悪化すると、労働組合は既得権益を守ろうと必死になる。そのため、企業は人材採用に積極的になりづらい状況が続くことになる。それに加えて、サムスン電子などの大手企業に就職するには熾烈な競争に勝ち残らなければならない。
さらに、半導体市況の悪化などによって景気が減速する中で、ムン・ジェイン政権は企業が耐えられないペースで最低賃金を引き上げてしまった。
この結果、ムン・ジェイン大統領の目論見とは逆に、収益確保を目指して人手を減らさなければならない企業が増えることになった。文氏は労働組合など、一部の支持層の支持と引き換えに、韓国経済全体の力を大きく棄損してしまった。
中国から見放された韓国
韓国の雇用環境の悪化の一因として、最大の輸出先である中国が、経済成長の限界を迎えたことも見逃せない。中国向け輸出は韓国の輸出全体の約27%を占めているが、2018年以降、中国経済の減速とともにサムスン電子をはじめとする韓国企業の収益は大きく悪化し、これも韓国の雇用環境を軟化させた要因になっている。
中国としては、韓国が安全保障面を中心に米国と距離を置き、朝鮮半島情勢が自らの意向に沿う状況を目指さなければ、韓国に対しての経済制裁を止めることはないであろう。しかしアメリカとの関係を悪化させるわけにもいかず、特にトランプ大統領の取る行動は過去の事例からみても予測が難しく、身動きが取れない状況にみえる。
主要な収益源となってきた中国の成長が限界を迎える中、2019年は韓国の失業保険給付額が前年から25%増加しており、リスクへの対応力を蓄えるために人件費を削減せざるを得ない韓国企業が多く、相当な人員削減が行われたことがわかる。
この状況が続くと、韓国の産業基盤は一段と縮小し、これまでにも増して雇用機会が失われる恐れがある。
韓国はなぜ北朝鮮との関係改善を求めるのか?
ムン・ジェイン大統領は、経済よりも、北朝鮮との関係強化を自力で進めようとしているように思われる。米国の懸念をよそに南北統一を夢見る文大統領が北朝鮮を重視すればするほど、朝鮮半島情勢の不安定感は高まりやすい。
そしてこれは韓国経済の安定感を損なう要因となる。加えて、急速な人口減少から内需は低迷に向かうことになる。さらには韓国の家計は債務の増大という問題にも直面している。韓国の出生率が世界最低レベルなのは、経済の政治、経済が絡まった結果なのである。
韓国企業が自国内で、自力で、成長を目指すことの難しさは増し、生き残りをかけ、海外に出ていかざるを得なくなる企業は今後ますます増えるだろう。日本と同様に、コンビニ業界では営業時間の短縮や、省人化に踏み切り、コストを抑えなければならないケースも増えている。
海外進出や省人化への取り組みが難しい企業もあるなかで、この状況が続くと、韓国では産業の空洞化懸念が高まるなどし、成長を目指すこと自体が難しくなるだろう。
雇用環境は追加的に悪化し、人々の不満はさらに膨張すると考えら、ムン・ジェイン政権は不安定化を増すことになるであろう。
今後の展開によっては、米中経済の減速が一段と鮮明化し、韓国の景気減速・後退懸念が高まる可能性も否定できない。その場合、海外投資家が韓国株を売却するなどして急速な資金流出が起きるなどし、韓国の雇用・所得環境にはかなりの影響が及ぶだろう。
今のところ、ムン・ジェイン政権がこうしたリスクにどう対応できるか妙案が見当たらない。経済界が切望する日韓通貨スワップ協定の再開のめども立たない。
ムン・ジェイン大統領は経済の改革よりも、左派政権の長期化を目指して南北統一などを重視し続けている。今すぐ韓国経済がかなり厳しい状況を迎えるとは考えづらいが、先行きは楽観できない。
韓国はデフォルトする?
1997年のアジア通貨危機では、韓国はデフォルト寸前まで追い込まれ、IMFが経済介入し、財閥解体が行われた。株式市場は大暴落し、韓国ウォンも同様に大きく下落した。
2007年の世界同時不況時が発端となり、2008年、2009年には韓国ウォンが大きく下落し、韓国通貨危機が起こった。
現在の韓国は過去2回に事例が起こったときと同様の状況になる可能性も非常に高まっていると考えられ、韓国株式の売り、韓国ウォンの売りの投資妙味が高まっていると考えられるのではないだろうか。
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