ゲームストップ株はどう収束する?
近頃、投資家の間で最も話題になっているひとつがゲームストップ株であることは間違いありません。
先週の米株式市場の変調、日本株の変調もこの問題があります。改めて今回はゲームストップ株で起こってきた今までの流れを少しまとめてみたいと思います。そしてそこから考えられる今後のリスク、その対応策についても考えてみました。
ゲームストップ社とは?
コロナ禍でも堅調を続けてきた米国株式市場の一部に、歪みが目立つようになってきています。米ゲーム販売店ゲームストップの株価は、2020年の年初から今年の高値は200倍程度まで急騰しました。この企業は赤字であり、そもそもゲーム自体、オンライン、スマホゲームに流れる中で、企業価値が一気に高まるイベントがあった訳ではありません。
そのような状況の中で、ビデオゲーム販売の米ゲームストップの株式は、個人投資家による買いが膨らみ大きく上昇しました。
SNS:レディット
SNSのレディットの中の人気掲示板である、ウォールストリートベッツ(WallStreetBets)に投稿された強気のコメントで、ゲームストップ株は高騰しました。そして改めて、ゲームストップ株の急騰により、何百万人もの米国民に株式を取引できるようにした、低コストの個人向け取引プラットフォームであるロビンフットなどが再び脚光を浴びることになったわけです。
個人向け投資プラットフォーム:ロビンフット
昨年の春以降の株式高騰の要因の一つは過剰流動性資金にあります。アメリカでも多くの国民に給付金が配られ、失業保険がばらまかれました。若い世代の多くはこれらの資金を使って、ロビンフットで株や銀、ビットコインを購入し、彼らが動けば相場が大きく乱高下するという状況が今起こっています。
先週末にビットコインの価格が一気に6,000ドル程度上昇する局面がありましたが、これはテスラ社のイーロンマスク氏がSNSに #BTC とつけ、それが拡散したことによる上昇でした。SNSの影響は本当に大きくなっています。
利用しやすい個人向けトレーディングとソーシャルメディアの組み合わせは、当局の監督が行き届かなければ、市場を大きく混乱させる恐れがあることが今回は明確になったわけです。市場の健全性を低下させるだけでなく、これは確実に個人投資家をリスクにさらすことになるでしょう。
ウォール街憎し、富の二極化が巻き起こす騒動
レディットは個人投資家の間での投資に関わる情報の交換に使われているだけではありません。ユーザーに特定の投資行動を呼びかけ、個人投資家を結託させているのです。トランプのツイッター発言など、世論操作に利用されること等が、SNSの問題点の一つですが、SNSが金融市場と結びついた結果、相場操縦的な投資行動が引き起こされているのです。
さらに、レディットを通じて個人投資家らが結託し、ヘッジファンドを攻撃する動きが強まっています。それが、ゲームストップの異常な株価急騰の背景にありました。
特定銘柄の空売りを公言するヘッジファンドを攻撃し、彼らに損失を出させるために、個人投資家らがレディットを通じてその銘柄の買い、オプション取引でのコールオプション(買う権利)の買いを呼びかけ、多くの個人投資家が同調して買うことにより価格上昇が起こり、ヘッジファンドは踏み上げの中で、高値で信用取引で行っている売りポジションを買い戻さなければならず、大きな損失を被ることになりました。空売りを専門とするヘッジファンドでは既に、新規で空売りする銘柄を公表しないところも出てきています。
貧しい庶民が機関投資家を叩く
個人投資家がヘッジファンド潰しに動く背景には、ウォールストリートで巨額の利益を上げる貧しい庶民の敵である機関投資家を叩くという意識が強くあります。富の二極化に対しての不満がこの行動の根元にあります。
SNSを活用することで、個人投資家らが団結し、個々では資金力で全く敵わないヘッジファンドなど機関投資家を打ち負かすのは、彼らにとっては痛快なゲームでしょう。しかしその結果、株式市場は歪められ、非効率性が高まり、信頼性を失ってしまうことになりかねません。
今回は大きな損失を被ったヘッジファンドが、他の優良銘柄、GAFAM等を換金売りするのではないかという思惑が広がり、先週は優良株の下落が起こりました。
ヘッジファンドは良くて個人投資家はダメ?
ヘッジファンドや機関投資家は個々の銘柄を売り買いの推奨を行うことはOKで、個人がSNSで投稿することはダメだというような判断がもしなされれば、それこそ不公平な市場となり、既得権益側のために有利に働く市場ということになってしまいます。
ロビンフットなどでは一時的に50銘柄程度の取り扱いを停止しましたが、これに対して民主党議員が意見することで、停止を解除するなど、乱高下は続いています。
財政難企業が増資できてしまった・・・
レディットを利用して不人気株を買い上げ、空売り投資家を締め上げるデイトレーダー軍団のおかげで、アメリカン航空グループやAMCエンターテインメント・ホールディングスなどは市場での資金調達という大きな恩恵を受けています。両社はいずれもここ1週間に数億ドル相当の株式を発行し、厳しい資金繰りを乗り越えようとしています。
本来であれば財政難で、さらには空売りによる株価下落で資金調達など難しい状況にありましたが、個人投資家の買いによる株価上昇、さらには空売り投資家の買い戻しにより増資が可能になってしまったわけです。これはやはり歪な市場としかいいようがありません。
今回の騒動をどのように考えるべきか?
過剰流動性資金が大量に余る中で、各国中央政府は新型コロナに対する金融緩和政策はまだまだ続けます。市場は乱高下するも、基本的には上昇基調は当面の間は続きます。そのような中で個人が取るべき行動とは?
・GAFAM等のプラットフォーマー、優良株の押し目買いを行う
・紙幣からの分散、デジタル資産であるビットコインへの分散投資を行う
・株式市場のボラティリティも相当に高まると考え、信用取引は控える
・バブルは必ず最後は崩壊し、バブルの規模が大きければ大きいほど悲惨になると考えておく
まずはここまででしょう。今回の騒動は最終的にどういう着地点になるかによって、状況も変わってきますので、投資家として、この問題については今後も継続して注視していきましょう。
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