今日のポイント

弱い雇用でも金利は下がらない――「景気減速」と「インフレ圧力」が同居し、Fedが簡単には動けないことが今日の市場の軸です。
前日までの「原油高→インフレ→金利上昇」という単純な流れに、今日は雇用減速という逆方向の材料が加わりました。それでも10年債利回りは4.8%近辺に残っており、株式市場は反発したものの、金利問題が解消したわけではありません。

過去24時間の主要市場動向

S&P 500:7,666.60(+0.46%)

S&P 500は3日続落後の買い戻しが入り、0.46%高で取引を終えました。素材株を中心に幅広く買われ、Dellの好決算や半導体株の反発も指数を支えています。一方、原油高、4.8%近辺の長期金利、米・イラン情勢への警戒は残っており、本格的なリスクオンというより「売られ過ぎからの反発」の色合いが強い一日でした。

ナスダック指数:26,217.83(+0.45%)

ナスダックも0.45%上昇し、半導体株ではNVIDIAが3.2%、Micronが2.4%、Qualcommが2.0%上昇するなどAI関連の一角に買い戻しが入りました。ただしソフトウェア・サービス株は、AIによる既存ビジネスの破壊懸念から相対的に弱く、AI銘柄の中でも選別が進んでいます。取引終了後にはBroadcomが市場予想を下回る売上高見通しを示しており、次の取引ではAI株全体への波及が焦点になります。

米国10年債利回り:4.7960%(+0.00%)

10年債利回りはほぼ横ばいの4.7960%ですが、一時4.818%まで上昇し、2023年11月以来の高水準を付けました。ADP雇用統計が予想を下回ったにもかかわらず金利低下は限定的で、原油高、財政懸念、根強いインフレ圧力が債券買いを阻んでいます。9月Fed会合での25bp利上げ確率は約65%まで織り込まれており、金曜日の雇用統計が次の大きな分岐点です。

ビットコイン:77,416.15ドル(+0.01%)

ビットコインはほぼ横ばいですが、日中は米・イラン情勢と金利上昇を受けて一時約1%下落するなど、表面上の変化率以上に振れた一日でした。SOLやETHなど高ベータの暗号資産はBTCより大きく売られており、今回の売りは暗号資産固有ではなく、原油・債券を起点とするマクロのリスクオフとみられます。77,000ドル台を維持する耐性は見せていますが、8万ドル回復には金曜日の雇用統計とFed利上げ観測の後退が重要になります。

過去24時間の重要経済・金融ニュース

米民間雇用は3.8万人増に失速、景気減速のシグナルがFedの利上げ判断を複雑化

ADPによる8月の米民間雇用者数は3万8,000人増にとどまり、市場予想の約4万8,000人を下回りました。7月の4万6,000人増からも減速し、製造業では1万7,000人、専門・企業サービスでは1万6,000人の雇用が減っています。一方、教育・医療は4万5,000人増となり、労働市場全体が急激に崩れているというより、「採用しないが解雇もしない」低速状態が続いています。景気減速だけならFedの利上げを抑制する材料ですが、現在は原油や関税を起点としたインフレ圧力が同時進行しているのが問題です。株式市場には金利低下期待を与える一方、景気敏感株や企業利益には弱気材料となります。ADPと政府雇用統計の連動性は高くないため、最終判断は金曜日の非農業部門雇用者数に持ち越されます。市場予想は約5万5,000~5万6,000人増で、ここから大きく外れるかが次の焦点です。

Fed地区連銀報告、景気は小幅拡大も物価圧力残る 「利上げも据え置きも決め手なし」

Fedが公表したベージュブックでは、米経済活動は「小幅に増加」、雇用もわずかな増加にとどまる一方、物価は引き続き緩やかに上昇していることが示されました。12地区のうち物価上昇ペースが鈍化したのは3地区だけで、8地区はほぼ変化なしとなっています。特に製造業や建設では、エネルギー、輸送、金属、石油化学製品などの投入価格上昇が目立ちました。一方、消費者の価格感応度が高まり、企業がコスト増を販売価格へ完全転嫁できないという報告もあります。つまり企業にとっては「インフレは高いが値上げもしにくい」という利益率圧迫型の環境になりつつあります。市場は9月15~16日のFed会合で約65%の確率で利上げを織り込んでいますが、この報告だけでは利上げ・据え置きのどちらにも決定打になりません。今後は金曜日の雇用統計と9月11日のインフレ指標を、単独ではなく組み合わせて見る必要があります。

Broadcom、AI半導体売上は3倍超でも見通し届かず 「AIなら何でも上振れ」の局面に変化

Broadcomは第3四半期売上高が295.9億ドルとなり、AI半導体売上高は167億ドルと前年同期比で3倍超に拡大しました。しかし第4四半期の総売上高見通しは約348億ドルと、市場予想の350.3億ドルをわずかに下回り、株価は時間外で3%以上下落しています。興味深いのは、AI半導体自体の第4四半期見通し217億ドルは市場予想を上回っている点です。つまりAI需要そのものが崩れているわけではなく、カスタムAIチップの競争激化や事業全体の期待値が極めて高くなっていることが問題です。GoogleがMarvellとの大型契約を進めるなど、ハイパースケーラー向けカスタム半導体の競争も激化しています。NVIDIAだけでなく、Broadcom、Marvell、ネットワーク、メモリーまで広がったAI相場では、「需要成長」よりも「期待値を超え続けられるか」が株価を左右する段階に入っています。次の取引ではBroadcom単体より、SOX指数やNVIDIA、Marvellへの連鎖反応を確認することが重要です。

OPEC+、高騰する原油でも増産策を追加せずか 価格決定力は「生産枠」から地政学へ

Reutersによると、OPEC+主要7カ国は9月6日の会合で、10月の生産方針を変更しない可能性が高まっています。これまで進めてきた日量165万バレル規模の減産解除は9月で完了しますが、追加増産によって原油高を抑える方向には動かない見通しです。より重要なのは、設定された生産枠を増やしても、イラン戦争やロシア・カザフスタンの供給障害によって実際の生産量が追いついていない点です。つまり現在の原油価格は、従来の「OPEC+が何バレル増産するか」より、ホルムズ海峡など実際の輸送能力に左右されやすくなっています。これは昨日までの単純な「戦争で原油高」という説明から一歩進んだ論点で、供給政策による価格安定化装置が弱くなっているということです。原油高が長期化すれば、米国だけでなくカナダや欧州など各国中央銀行の利上げ圧力にも波及します。投資家は日曜日のOPEC+会合そのものより、実生産量、ホルムズ海峡の輸送量、Brentが90~95ドル台を定着させるかを確認すべきです。