日本でもオミクロン株の急拡大でコロナ第7波が到来し、ただでさえインフレ・物価高の中、経済の落ち込みが懸念されます。
しかし、お隣の中国をみると日本よりも状況は深刻であり、この影響は今後の世界経済への大きな重しになる可能性も高いです。今日はその辺りに視点を当てて深読みしてみたいと思います。
中国のGDPの上昇は0.4%に止まる
中国国家統計局が15日発表した2022年4~6月期のGDPは、物価の変動を調整した実質で前年同期比0.4%の増加に止まりました。
新型コロナの感染封じ込めを狙うゼロコロナ政策で経済活動が滞り、1~3月の4.8%増から急速に失速しました。景気は6月から持ち直しているようですが、政府が2022年の成長率目標とする5.5%前後の達成は相当厳しい状況にあります。
さらに言えば、オミクロン株は上海など、中国国内でも流行の兆しが見えています。多くの都市で再度のロックダウンが行われれば、プラス成長の達成どころか、マイナス成長になる可能性も高いです。上海や周辺都市でのロックダウンが行われることになれば、製造ラインが止まり、物流も止まり、世界経済へのマイナス影響は甚大です。
需要の急減により、資源価格、エネルギー価格は下落する可能性が高くなり、インフレ上昇に対しての下落圧力は増す形になりますが、総合的に考えると、金融市場に対しての影響は大きなリスク、マイナス要因となります。
中国不動産バブルがいよいよ完全崩壊が間近か?
中国の不動産市場は冷え切っており、実態的には不動産バブルは既に崩壊に向かっていると考えられます。この崩壊がどのような形になるのかが正直なところまだ見えていません。ただし、今の状況を見ている限り、アメリカで起こったサブプライムローン問題よりも質が悪く見えます。
中国大手不動産デベロッパーのいくつかは既にデフォルトを起こしています。これが連鎖的にも続きそうな感じがしますが、中国内では未完成なのに既に売られてしまっているマンションがたくさんあります。
事前販売で引き渡しされた住宅は住宅の約60%のみ
中国では未完成不動産に対して銀行ローンが通り、購入者の殆どがローンを組みます。中国の不動産開発会社は2013から2020年に事前販売した住宅の約60%しか引き渡しておらず、残りの40%はまだ未完成のままです。その間に中国の住宅ローンはなんと約539兆円も増加しています。
既に完成済み不動産についても下落が続いていますが、未完成物件所有者の未払いの急増が、中国不動産バブルを最終崩壊させるのではないかと考えています。
デベロッパーの工事が止まり、マンションが完成しないことに抗議して、ローン返済停止をちらつかせる住宅購入者が急増し、金融機関の持つ住宅ローン事業の資産の質は今後一気に悪化します。
住宅購入者が住宅ローンの支払いを停止すれば、銀行の住宅ローン不良債権比率が、今より3から5倍上昇する可能性が高いです。
最大で2,200億ドル,日本円で30.5兆円ほどの住宅ローンが、中国の未完成住宅プロジェクトに個人融資されています。銀行は先行販売されたマンションを担保として所有していますが、その資産は未完成であるため、ローン返済が止まれば大きく損失を被る可能性が高いです。
そして、完成を待てば、既に不動産価格は下落中ですから、今後さらに不動産価値の大幅な下落リスクにさらされる可能性が高いです。そしてさらに言えば、現在の市況でマンションを売るのは難しいです。住宅競売の大波が来れば、不動産価格は暴落します。
このままいくと最悪の場合、社会の安定と金融の安定の両方が危うくなる可能性が高いのです。銀行が未完成の資産を差し押さえても、正直なところ、戻ってくる資本はゼロになるでしょう。
リーマンショックの要因だったサブプライムローン問題よりも悲惨な状況に?
この状況はリーマンショックの要因となったサブプライムローン問題よりもずっとタチが悪いです。サブプライムローンには担保とする住宅がありました。
サブプライムローンで押さえられた不動産は今は当時よりもずっと高値で市場で売買されています。現物の不動産という価値・資産があったわけです。今回の問題のタチの悪さは、ローンの元となる住宅が未完成ということです。そこにはほとんど価値などありません。
そして、中国は既に国民の世帯数よりも圧倒的に住宅が余っている状況です。
” ただでさえ余っている中で、未完成の物件を誰が完成させるのか? ”
既に多くのデベロッパーが破綻間近でそのような余裕などありません。地方政府が協力して完成させたとしても、さらに住宅を余らせるわけで、価格の下落に拍車をかけるだけです。金融当局は金融緩和策、利下げを行っていますが、ほとんど効果もない状況です。
中国の不動産バブルが崩壊すればどうなる?
不動産バブルが崩壊すれば、消費は大きく落ち込みます。含み資産というあぶく銭がなくなってしまい、借金だけが大きく残ればどうなるか?
お金を使わない。使えないだけでなく、政府、共産党に対しての国民の不平不満は募ります。その不平不満を抑えるために中国政府は何をするのか?
国民の怒りを外に向けようとするでしょう。台湾のリスクも高まりますし、日本の地政学的なリスクも高くなります。
先週のアメリカのCPIは9.1%と非常に高いものになりましたが、これが天井となり、インフレもようやく収まりそうな経済指標もたくさん出てきています。
金利の上昇も秋から年内に止まれば、日米間の金利拡大も止まることで、今年一気に進んだ円安も天井が見えてくるでしょう。そして秋からはようやく株価、暗号通貨市場も回復が見込めてきています。
しかし、ここで中国経済が不動産バブル崩壊により大きく落ち込むことになれば、マクロ経済状況は一気に更に悪化することになり、金融市場は落ち込み、さらに世界は混沌に向かっていくことになると考えておくべきです。
香港ドルのペッグが保てるのか?
中国経済が危うい中、香港にも注意してみておく点があります。みなさんの中には、HSBCの香港に銀行口座を持たれている方も多いのではないかと思います。
高いインフレが続く中、アメリカではFRBが利上げを毎回継続的に行い、日米金利差が拡大し
円安が進行し止まりません。香港ドルはUSドルとペックしていますので、日本円のようにドルに対して円安・ドル高になることはなく常に一定枠の中で推移しています。
アメリカが利上げをすれば香港も利上げをし、常に同じ金利に保ちバランスを保ちます。アメリカは非常に高いインフレで経済自体も強く回っています。
しかし、香港は中国の規制下のもとでゼロコロナ政策を行っています。お隣のマカオに関してはやはりドルペックなのですが、コロナ感染者拡大で先日からセミロックダウンが行われています。いまだにマカオは鎖国状態でカジノビジネスは大きく落ち込んでいます。香港の景気も決してアメリカのように良いわけではありません。
景気があまり良くない中で利上げをすればどうなるか?
景気はますます落ち込むことになります。
そこに加えてオミクロン株の感染拡大で厳しいロックダウンが行われれば?
経済はますます落ち込みます。
不動産価格は利上げによって下落する可能性が高いです。正直言ってこのままドルペックを保てる状況にはないように感じます。
ドルペックから外れれば香港ドルの通貨として魅力は大きく下落する可能性が高い
しかし、ドルペックから外れれば香港ドルの通貨として魅力は大きく下落する可能性が高いです。ドルペックが保たれているうちにUSDに両替する人が多いでしょうから。
今の時点で香港ドルがUSDとのペックが外れる話が出ているわけではありませんが、もしそのような噂が流れだしたのであれば、香港に銀行口座を持ち、香港ドルを所有している人は、米ドルに両替するのが無難だと思います。
世界は本当に混沌とした状況が続いています。みなさんもリスク管理には徹底注意をしていきましょう。
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